Asthma Selected Papers Online

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下記雑誌に掲載された喘息に関する論文のうち、注目すべき論文を3人の編集委員が厳選。病態、疫学、診断、治療の4分野に分け、各論文を簡単な要約で紹介しています。

※現在297論文紹介しています。

【対象雑誌】
  • Allergy、 Am J Respir Cell Mol Biol、 Am J Respir Crit Care Med、 Ann Am Thorac Soc、 Chest、 EMBO J、 Eur Respir J、 Front Cell Infect Microbiol、 Immunity、 Int J Mol Sci、 J Allergy Clin Immunol、 J Allergy Clin Immunol Pract、 J Clin Invest、 J Exp Med、 JAMA、 Lancet、 Lancet Respir Med、 Medicine(Baltimore)、 N Engl J Med、 Nat Commun、 Nat Med、 Proc Natl Acad Sci USA、 Pulm Pharmacol Ther、 Respir Med、 Respirology、 Science、 Thorax、 など
【編集委員】
  • 一ノ瀬 正和 先生(大崎市民病院アカデミックセンター監理官)
  • 井上 博雅 先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学教授)
  • 長瀬 洋之 先生(帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授)

最新論文

Type 2-high asthma is associated with a specific indoor mycobiome and microbiome.

Vandenborght LE, Enaud R, Urien C, et al.

【背景】環境微生物への曝露と喘息の関連は十分に立証されている。しかし、喘息患者の肺および室内微生物叢のディープシークエンシングの結果を、スパイロメトリーや臨床症状、エンドタイプなどのパラメーターと組み合わせた研究は報告されていない。【目的】本研究は、室内環境微生物への曝露と肺内微生物叢との関連を調査し、重症喘息患者(SA)の炎症および臨床転帰にも対する微生物への曝露の役割を検討した。【方法】Cohort of Bronchial Obstruction and Asthmaに登録された55例のSA患者を対象に、静電式集塵装置(EDCs)を用いて、室内微生物叢を解析した。そのうち22例の患者から安定期と増悪期の両方の喀痰を採取できたので、EDCサンプルと喀痰のペア解析を行った。2型(T2)喘息エンドタイプに基づいて、EDCサンプル中の微生物叢と患者の喀痰の微生物叢を比較するため、アンプリコンメタゲノミクスで評価した。【結果】T2-lowのSA患者と比較して、T2-highのSA患者では室内微生物フローラにおける細菌の多様性が増加し、真菌の多様性が減少していた。そのうち、真菌の多様性の減少と呼気一酸化窒素濃度との間で強い相関がみられた。EDCサンプルでの微生物叢の多様性はT2エンドタイプにより大きく異なった。さらに、喀痰とEDCサンプルに共通してみられる真菌群の割合は、喘息増悪患者において有意に高かった。【結論】以上の結果より、室内微生物叢とSA患者の臨床的特徴との関連性が初めて示され、喘息における室内環境、真菌、宿主間の相互作用を解明することに再び関心が高まると考えられる。

J Allergy Clin Immunol. 2021;147(4):1296-1305.e6.

NEW

Ssu72 regulates alveolar macrophage development and allergic airway inflammation by fine-tuning of GM-CSF receptor signaling.

Woo YD, Koh J, Ko JS, et al.

【背景】免疫受容体シグナル伝達の微調整 (fine tuning)は免疫細胞の分化と機能に重要である。なかでも、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子受容体(GM-CSFR)シグナル伝達は、肺胞マクロファージ(AMs)を含む特定の骨髄系細胞の成長に重要な役割を果たしている。一方、AMsにおけるGM-CSFRシグナル伝達の微調整の重要性およびそのアレルギー性炎症との関連については報告されていない。【目的】脱リン酸化酵素Ssu72は当初、RNAポリメラーゼⅡ活性の調節因子として同定されてきたが、本研究は、Ssu72がGM-CSFシグナル伝達を調節することによって、AMsの分化およびアレルギー性気道炎症を制御する可能性について検討した。【方法】LysM-CreSsu72fl/flおよび Cd11c-CreSsu72fl/flマウスを作製し、オボアルブミン(OVA)またはダニによるアレルギー性喘息モデルを用いた。【結果】GM-CSFの刺激後、Ssu72はAMsのGM-CSFR 鎖と直接結合し、そのリン酸化を阻害した。この結果と一致して、Ssu72欠損の成熟AMsにおいては、野生型細胞に比べて、GM-CSFR 鎖およびその下流分子のリン酸化レベルが高く、細胞周期、細胞死、細胞ターンオーバー、ミトコンドリア関連の代謝およびLPS反応性の調節不全がより顕著であった。ヤヌスキナーゼ(JAK)2阻害剤は、GM-CSFR 鎖のリン酸化レベルを低下させることによって、その調節不全を回復させた。LysM-CreSsu72fl/flマウスにおいては、AMsの成長と成熟が十分ではなく、同様な現象は生後のCd11c-CreSsu72fl/flマウスでもみられた。さらに、LysM-CreSsu72fl/flマウスでは、対照マウスと比較して、OVAまたはダニ誘発性アレルギー性喘息モデルへの応答性が低かった。Ssu72欠損の成熟AMs をJAK2阻害剤で前処理し、マウスへ養子移入すると、その応答性が回復された。【結論】以上の結果から、Ssu72はGM-CSFR 鎖と結合し、そのリン酸化レベルを低下させることによって、GM-CSFRシグナル伝達を微調整する。その結果、AMsの成長、成熟、ミトコンドリア機能およびアレルギー性気道炎症が調節される。

J Allergy Clin Immunol. 2021:147(4):1242-1260.

NEW

Heterogeneity of lower airway inflammation in patients with NSAID-exacerbated respiratory disease.

Jakiela B, Soja J, Sladek K, et al.

【背景】非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)増悪性呼吸器疾患(N-ERD)喘息は、慢性副鼻腔炎、アスピリンやその他のCOX1阻害薬不耐によって特徴づけられている。臨床データでは、N-ERDフェノタイプにおける多様性が示されている。【目的】N-ERD患者の下気道における免疫メディエータープロファイルを検討した。【方法】サイトカイン(Luminexアッセイを用いて計測)およびエイコサノイド(質量分析を用いて計測)レベルが、N-ERD患者群(22例)、NSAID耐性喘息患者群(21例)、コントロール群(11例)の気管支肺胞洗浄液(BALF)より測定された。BALF細胞におけるmRNA発現は、TaqMan低密度アレイを用いて定量化した。【結果】NSAID耐性喘息患者群(9.5%)と比較して、N-ERD患者群(54.5%)では下気道の好酸球増多がより多く認められた(p=0.009)。BALF細胞における2型(T2)免疫シグネチャーは、N-ERDの好酸球性サブフェノタイプでより顕著に認められた。同様に、BALF中のペリオスチンおよびCCL26濃度は、好酸球性N-ERD患者群で有意に増加しており、BALF細胞におけるT2シグネチャーと相関していた。すべての喘息患者におけるBALFメディエーターの多重パラメータ解析では、以下の2つの免疫エンドタイプが認められた;(BALF中ペリオスチンレベルが上昇している)T2様エンドタイプ、および、(マトリックスメタロプロテアーゼおよび炎症性サイトカイン高値の)非T2/向炎症エンドタイプ。N-ERD患者群の多くが、T2エンドタイプ保有として分類された(68%)。エイコサノイドプロファイルの変化(ロイコトリエンE4レベル増加など)は、気道の好酸球増多のみられるN-ERD患者に限定されていた。血中好酸球増多は、気道のT2シグネチャーの有用な予測因子であると考えられた(AUC=0.83);しかし、サロゲートバイオマーカーは、好酸球性N-ERDの識別に対して中等度の検出能しか有していなかった(血中好酸球に対してAUC=0.72、ペリオスチンに対してAUC=0.75)。【結論】下気道免疫プロファイルは、N-ERDでかなりの多様性を示しており、T2応答性および好酸球性炎症に偏っていた。ロイコトリエンE4産生増加は、下気道の好酸球増多のみられる患者サブグループに限定されていた。

J Allergy Clin Immunol.2021;147(4):1269-1280.

NEW

Effect of early and late prenatal vitamin D and maternal asthma status on offspring asthma or recurrent wheeze.

Lu M, Litonjua AA, O'Connor GT, et al.

【背景】小児喘息発症のプログラミングは複雑である。妊娠期の喘息は、小児喘息の強力なリスク因子であるが、その一方で、ビタミンDは妊娠期曝露を修飾可能な因子として指摘されてきた。【目的】喘息があるまたはない女性の妊娠期の前期および後期のビタミンDの状態が、小児の喘息または反復性喘鳴の発症に与える影響を検討した。【方法】小児喘息のハイリスクにある妊娠期女性(母子組合せ806例)を対象とした、ランダム化二重盲検プラセボ対照ビタミンD補充に関する試験the Vitamin D Antenatal Asthma Reduction Trialから前向きに収集されたデータを用いてコホート研究を行った。25-ハイドロキシビタミン-D〔25(OH)D〕レベルは、妊娠前期および後期に測定された。主な曝露は、喘息があるまたはない女性の妊娠時における、妊娠前期・後期のビタミンD充足〔25(OH)Dレベル 30ng/mL以上〕状態を表す順序変数とした。主要評価項目は、児の3歳までの喘息または反復性喘鳴発症とした。また、児の6歳時における早期発症喘息または反復性喘鳴の活動性喘息への進展に対する妊娠時ビタミンDレベルの影響についても検討した。【結果】妊娠前期・後期にビタミンD不十分であった母と比較して、喘息を罹患している母においては、妊娠前期または後期にビタミンDが充足している母(補正オッズ比 0.56、95%CI 0.31-1.00)、または、妊娠前期および後期にビタミンDが充足している母(補正オッズ比 0.36、95%CI 0.15-0.81)で、3歳までの児の喘息または反復性喘鳴の発症リスクが低かった(p for trend=0.008)。この保護的傾向は、3~6歳における喘息または反復性喘鳴の活動性喘息への進展においても再現性が認められた(p for trend=0.04)。【結論】本研究によって、妊娠期全体にわたるビタミンD充足の保護的役割、特に妊娠期喘息による小児喘息または反復性喘鳴発症のリスクを抑制する役割が示された。

J Allergy Clin Immunol. 2021;147(4):1234-1241.e3.

Single-cell transcriptomic analysis reveals key immune cell phenotypes in the lungs of patients with asthma exacerbation.

Li H, Wang H, Sokulsky L, et al.

【背景】喘息増悪は喘息症状の悪化と関連しており、重症例は入院につながる可能性がある。一方で、増悪の経過を決定する分子免疫学的プロセスは依然としてわかっておらず、効果的な治療薬の開発の進展が妨げられている。【目的】本研究は、細胞レベルで喘息増悪と強く関連する候補遺伝子を同定することを目的とした。【方法】喘息増悪の患者および健常対照者を対象に、気管支鏡を用いて気管支肺胞洗浄液を採取した。蛍光活性化セルソーティング法(FACS)を用いて細胞を分離し、濃縮された細胞集団に対してシングルセルRNAシークエンス解析を行った。【結果】喘息患者の気管支肺胞洗浄液では、単球、CD8+ T細胞、マクロファージが有意に増加していた。一連のサイトカインと細胞内形質導入制御因子は喘息増悪と関連し、複数の細胞クラスターで共有され、複雑な分子フレームワークを構築した。また、感染と関連するCD8+ T細胞の部分集団(C1-a)および単球クラスター(C7クラスター)において、真核生物翻訳開始因子2(eIF2)シグナリング、エフリン受容体シグナリング、C-X-Cケモカイン受容体4シグナリングを含む増悪関連コアモジュールが活性化されていた。【結論】今回、複数の細胞クラスターに特異的に発現している重症喘息関連遺伝子が数多く同定された。

J Allergy Clin Immunol. 2021;147(3):941-954.