Asthma Selected Papers Online

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下記雑誌に掲載された喘息に関する論文のうち、注目すべき論文を3人の編集委員が厳選。病態、疫学、診断、治療の4分野に分け、各論文を簡単な要約で紹介しています。

※現在307論文紹介しています。

【対象雑誌】
  • Allergy、 Am J Respir Cell Mol Biol、 Am J Respir Crit Care Med、 Ann Am Thorac Soc、 Ann Intern Med、 Chest、 EMBO J、 Eur Respir J、 Front Cell Infect Microbiol、 Immunity、 Int J Mol Sci、 J Allergy Clin Immunol、 J Allergy Clin Immunol Pract、 J Clin Invest、 J Exp Med、 JAMA、 Lancet、 Lancet Respir Med、 Medicine(Baltimore)、 N Engl J Med、 Nat Commun、 Nat Med、 Proc Natl Acad Sci USA、 Pulm Pharmacol Ther、 Respir Med、 Respirology、 Science、 Thorax、 など
【編集委員】
  • 一ノ瀬 正和 先生(大崎市民病院アカデミックセンター監理官)
  • 井上 博雅 先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学教授)
  • 長瀬 洋之 先生(帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授)

最新論文

NEW

Peripheral and proximal lung ventilation in asthma; short-term variation and response to bronchodilator.

Marshall H, Kenworthy JC, Horn FC, et al.

【背景】喘息における中枢気道と末梢気道の相対的関与は明らかになっていない。過分極ガスMRIを利用すると、肺換気量の百分率(VV%)で定量評価が可能な換気分布の高分解能3次元画像が得られる。【目的】本研究では、喘息患者コホートを対象に、(1)VV%のベースライン再現性を定量評価、(2)肺の中枢領域と末梢領域での換気分布の評価、(3)気管支拡張薬(BD)吸入に対する局所換気の反応調査を行った。【方法】コントロール不良な中等症~重症喘息患者33例を過分極3He MRIで撮像した。ベースライン時点で2つの画像データセット、BD吸入後に1つの画像データセットを取得した。画像を中枢肺野と末梢肺野に分けて分析した。【結果】Bland-Altman分析の結果、VV%の再現性は高いことが示された(バイアス=0.12%、LOA=-1.86、2.10%)。ベースラインVV%の変動は中枢肺野よりも末梢肺野において大きかった。中枢肺野は末梢肺野よりも換気が良好であった。BDに対する反応において、換気量は全体的にも局所的にも有意に増加し、その増加量は中枢肺野よりも末梢肺野において多かった。過分極ガスMRIで示されたBD反応性の変化は58%、スパイロメトリーで示された変化は33%で、過分極ガスMRIのほうが感度が高かった。【結論】中枢肺野と比較して末梢肺野では換気能が低下しており、BDへの反応が強かった。過分極ガスMRIはベースラインの再現性とBDによる可逆性の感度が高く、本法は少数の被験者を対象に治療反応をみるような研究に適していることが示唆された。

J Allergy Clin Immunol. 2021;147(6):2154-2161.e6.

NEW

Long-term exposure to low-level air pollution and incidence of asthma: the ELAPSE project.

Liu S, Jørgensen JT, Ljungman P, et al.

【背景】長期間に渡る周囲の大気汚染への曝露は小児発症喘息と関連づけられてきたが,エビデンスはいまだ不十分である。われわれは多施設共同プロジェクト”Effects of Low-Level Air Pollution: A Study in Europe”(ELAPSE)において、PM2.5、二酸化窒素(NO2)、ブラックカーボン(BC)への長期曝露と成人における喘息の発症率との関連を検討した。【方法】われわれは、喘息の病院での診断に関する情報のあるデンマークとスウェーデンにおける3つのコホートからのデータを統合した。2010年における大気汚染物質の平均濃度は、参加者のベースライン時の住所においてhybrid land use regression modelによってモデル化された。大気汚染への曝露と喘息発症の関連は、潜在的交絡因子を調整して、コックス比例ハザードモデルを用いて検討された。【結果】98,326例の参加者のうち、1965例が平均16.6年の追跡期間中に喘息を発症した。完全調整モデルにおいて、ハザード比と95%信頼区間がPM2.5については5 μg·m-3ごとに1.22(1.04-1.43)、NO2については10 µg·m-3ごとに1.17(1.10-1.25)、BCについては0.5 10-5 m-1ごとに1.15(1.08-1.23)であることから関連性を認めた。EUおよびUSの限界値より曝露レベルは低かったが,ハザード比は本研究のコホート集団でより高かった。おそらくPM2.5およびNO2・NO2およびBCの基準値に対するWHOのガイドラインはPM2.5の2つの汚染モデルを用いて変更されていないが,PM2.5の推定値は1つに収斂できる。濃度反応曲線は閾値に到達しなかった。【結論】自動車交通など特に化石燃料の燃焼発生源に由来する大気汚染への長期曝露は、たとえ現行の限界値を下回るレベルであったとしても、成人喘息と関連していた。

Eur Respir J. 2021;57(6):2003099.

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Asthma in a large COVID-19 cohort: Prevalence, features, and determinants of COVID-19 disease severity.

Caminati M, Vultaggio A, Matucci A, et al.

【背景】COVID-19患者の喘息有病率はかなり低いようであるが、COVID-19に罹患した喘息患者の臨床像や易感染性/転帰不良の決定因子に関する検討はほとんど行われていない。本研究では、COVID-19のため入院した患者の喘息有病率と特徴を報告し、喘息の臨床像とCOVID-19重症度の関連を検討した。【方法】イタリア6都市にある主要病院のCOVID病棟に入院した患者の診療記録を調査した。COVID-19の転帰(死亡/人工呼吸が必要 vs. 侵襲的処置を必要とせず退院帰宅)に従って、患者背景と臨床データを分析、比較した。【結果】COVID病棟の患者集団(2,000例)の喘息有病率は2.1%であった。喘息患者の平均年齢は61.1歳で、60%が女性であった。約半数の患者がアトピー体質であり、ほとんどの患者の血中好酸球数は正常であった。COVID病棟入院前の6ヵ月間に18%の患者で喘息増悪が報告されていた。24%がGINAステップ4/5の喘息患者であり、5%が生物学的製剤を使用中であった。31%の患者は定期的な治療を受けておらず、経口ステロイド薬の服用患者はごく少数であった。転帰不良群では男性が多く(64% vs. 29%、p=0.026)、喘息重症度がより高く(43% vs. 14%、p=0.040)、現喫煙者/既喫煙者の割合が高かった(62% vs. 25%、p=0.038)。【結論】イタリアの初の大規模なCOVID-19入院患者を対象とした研究で、COVID-19患者の喘息有病率は低いことが確認されたが、GINAステップ4/5の喘息患者や適切な治療を受けていない患者は高いリスクにあると考える必要がある。

Respir Med. 2020;176:106261.

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Nasal DNA methylation differentiates severe from nonsevere asthma in African American children.

Zhu T, Zhang X, Chen X, et al.

【背景】喘息は多様性に富む疾患であり、喘息の管理には重症度評価が重要となる。喘息の病態形成にはDNAメチル化(DNAm)が寄与している。本研究では、重症喘息児と非重症喘息児とでの鼻腔上皮のDNAmの差異を明らかにし、環境曝露の影響を評価した。【方法】アフリカ系アメリカ人の非重症喘息児33例と重症喘息児22例をエピゲノムワイド関連研究の対象とした。ゲノム全体の鼻腔上皮DNAmおよび遺伝子発現を測定した。喘息重症度および環境曝露と関連し、重症喘息の予測因子となるCpG部位を特定した。DNAmと遺伝子発現の相関を検討した。DNAm差異領域周囲の転写因子(TF)結合部位またはヒストン修飾の濃縮状況を明らかにした。【結果】喘息重症度と関連するメチル化差異のあるCpG部位(DMP)を816ヵ所、メチル化差異領域(DMR)を10ヵ所特定した。3ヵ所のDMPには重症喘息の鑑別能が認められた。興味深いことに、6ヵ所のDMPは、独立した小児コホートで、喘息、アレルギー性喘息、総IgE、環境IgE、FeNOと同時に関連した。27ヵ所のDMPは、車の排気ガスによる大気汚染や受動喫煙と関連した。22ヵ所のDMPのDNAmは、ヒト気管支上皮細胞でディーゼル粒子またはアレルゲンにより変化した。39ヵ所のDMPのDNAmレベルはmRNA発現と相関した。816ヵ所のDMPの近位に、喘息の発症機序に関与する3個のヒストンマークと複数のTFの濃縮がみられた。【結論】アフリカ系アメリカ人の非重症喘息児と重症喘息児では、鼻腔上皮のDNAmに有意差が認められ、一部のDNAmは疾患重症度の予測に有用であると考えられた。これらのCpG部位は環境曝露の影響を受けやすく、遺伝子発現を調節する可能性がある。

Allergy. 2021;76(6):1836-1845.

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TLR 7/8 regulates Type I and Type III Interferon Signalling in RV1b induced Allergic Asthma.

Krug J, Kiefer A, Koelle J, et al.

【背景】ライノウイルス(RV)誘発性の喘息ではインターフェロン(IFN)反応が障害されていることがこれまでに報告されている。Ⅰ型IFN(IFN-α/β)のヘテロダイマー型受容体はIFNαR-1とIFNαR-2で構成されている。リガンドがIFN-α/β受容体複合体へ結合するとSTAT1とSTAT2が細胞内で活性化される。Ⅲ型IFN(IFN-λ)はIFNλRAやIL-10R2を含む異なる受容体へ結合するが、その結合が引き金となって下流にある同一の転写因子類が活性化される。本研究では、RVがⅠ型IFNおよびⅢ型IFNの受容体に及ぼす影響を分析し、IFNαR1とIFNλRαの制御がToll様受容体(TLR)7/8作動薬であるR848によって媒介される可能性を検討した。【方法】未就学児(PreDicta)および初等学校児童(AGENDAS)の喘息児・非喘息児を対象とした2つのコホート研究を対象に、RV1bおよびTLR7/8作動薬R848で刺激した末梢血単核球(PBMC)の上清と細胞ペレット中のIFN-α、-β、-λのレベル、およびそれらの受容体レベルを測定した。また、マウスの全肺細胞由来の細胞上清でも同様にそれらを測定した。【結果】健康児と喘息児のPBMCにおいて、R848はIFNλ mRNAの発現を誘導したが、IFNαR mRNAレベルは抑制した。マウス肺細胞では、RV1bを単独およびR848とともに処理すると、T細胞中のIFNαR蛋白は対照に比べて抑制され、全肺でのIFNλR mRNAはRV1b感染単独と比較して抑制された。【結論】未就学児由来のPBMCでは、TLR7/8作動薬のR848による処理でIFNαR mRNAが減少し、IFNλRα mRNAが誘導されたことから、本法は小児喘息に対して抗ウイルス免疫反応を誘導する新たな手法になりうることが示唆された。

Eur Respir J. 2021;57(5):2001562.