Asthma Selected Papers Online

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下記雑誌に掲載された喘息に関する論文のうち、注目すべき論文を3人の編集委員が厳選。病態、疫学、診断、治療の4分野に分け、各論文を簡単な要約で紹介しています。

※現在141論文紹介しています。

【対象雑誌】
  • Allergy、 Am J Respir Cell Mol Biol、 Am J Respir Crit Care Med、 Ann Am Thorac Soc、 Chest、 EMBO J、 Eur Respir J、 Immunity、 Int J Mol Sci、 J Allergy Clin Immunol、 J Clin Invest、 J Exp Med、 JAMA、 Lancet、 Lancet Respir Med、 N Engl J Med、 Nat Commun、 Nat Med、 Proc Natl Acad Sci USA、 Respirology、 Science、 Thorax、 など
【編集委員】
  • 一ノ瀬 正和(東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野 教授)
  • 井上 博雅 (鹿児島大学大学院呼吸器内科学 教授)
  • 長瀬 洋之 (帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギーグループ 教授)

最新論文

Inflammation-dependent and independent airway remodelling in asthma.

Elliot JG, Noble PB, Mauad T, et al.

【背景】喘息病態は〔顆粒球性(GA)、または乏顆粒球性(paucigranulocytic;PGA) の〕気道炎症および気道リモデリングによって特徴づけられる。しかし、炎症フェノタイプとリモデリングとの関係は不明である。気道リモデリングのいくつかの特徴は顆粒球性炎症に依存しているが、そうでない特徴もあると仮定した。【方法】コントロール 48例、気道壁内に顆粒球性炎症を認める喘息 (GA群) 51例、および顆粒球性炎症を認めない喘息 (PGA群) 29例の死後の気道領域を検討した。気道平滑筋(ASM)層、基底膜および気道内外壁の厚さ、ASM細胞のサイズと数、ASM層内の細胞外マトリックスの体積分率、ASM短縮および管腔粘液を測定し、3群間で比較した。【結果】PGA群では、コントロール群と比較して、ASM層および基底膜の厚さのみが増加していた。GA群では、コントロール群と比較して、ASMおよび基底膜の厚さが増加しただけでなく、気道内外壁が肥厚し、ASM短縮と粘液栓による気道内腔の狭窄が増強していた。顆粒球性炎症は、致死性喘息症例でより多くみられた。【結論】本研究結果により、気道内外壁の肥厚は炎症とともに認められるが、ASM層および基底膜の肥厚は炎症がない状態においても認められることが示唆された。したがって、ASM層および基底膜のリモデリングは、抗炎症治療への反応性が低い可能性がある。

Respirology. 2018 Dec;23(12):1138-1145.

The effect of early growth patterns and lung function on the development of childhood asthma: a population based study.

Casas M, den Dekker HT, Kruithof CJ, et al.

【背景】幼児の体重増加は、低肺機能および小児喘息の高リスクに関連している。児ごとの詳細な成長パターンは、身長と体重の差よりも有用な、小児呼吸器疾患罹患率の予測因子となる可能性がある。本研究では、乳児の成長パターンと肺機能および10歳時の喘息との関連、ならびに、児のBMIがこれらの関連に影響を与えているかどうかを検討した。【方法】前向き集団コホート研究に登録された小児 4,435例の生後3年における身長・体重の長期測定データより、身長・体重の最大成長速度、最大BMI、最大BMI時の年齢のデータを得た。10歳時にスパイロメトリー検査を行い、喘息罹患を質問票で評価した。スパイロメトリーのアウトカムには、努力肺活量(FVC)、1秒量(FEV1)、FEV1/FVC比、努力肺活量の75%における努力呼気流量(FEF75)が含まれた。【結果】最大体重増加速度の高値は、FVC高値と関連する一方で、FEV1/FVC比およびFEF75低値と関連していた。最大BMIの高値は、FVC、FEV1高値と関連する一方で、FEV1/FVC比、FEF75低値と関連していた。最大BMI時の年齢の高さは、特に出生時のサイズが小さい児において、FVC、FEV1、FEV1/FVC比高値と関連しており、男児における喘息罹患の低オッズ比と関連していた。最大体重増加速度および最大BMIとFVC、FEV1との関連が認められたのは、児のBMIのみであった。最大身長増加速度は、肺機能の傷害または喘息との関連は、一貫して認められなかった。【結論】最大体重増加速度および最大BMIは、気道開存性の減少に関連している一方で、特に男児において、最大BMI時の年齢は肺機能パラメーターの高値および10歳時喘息罹患リスクの低下に関連していた。

Thorax. 2018 Dec;73(12):1137-1145.

Maternal cytokine profiles during pregnancy predict asthma in children of nonasthmatic mothers.

Rothers J, Stern DA, Lohman IC, et al.

妊婦の免疫状態が児の喘息発症に影響しているかどうかについては、ほとんど解明されていない。非選択的な新生児のコホートであるTucson Infant Immune Studyに登録された児の母親から妊娠中および出産後に末梢血を採取し、血中の免疫細胞をマイトジェン刺激した後の上清中のサイトカインを測定した。9歳までの児の医師の診断による活動性喘息とその母親の喘息の既往歴を、質問票を用いて評価した。妊娠時の母親のサイトカイン(IL-13、IL-4、IL-5、IFN-γ、IL-10、IL-17)産生は、児の喘息の発症とは関連していなかった。しかし、妊娠時のIFN-γ/IL-13比、IFN-γ/IL-4比は、小児喘息のリスク低下と有意に関連していた(それぞれ、381例、OR 0.33、95%CI 0.17-0.66、p=0.002および368例、OR 0.36、95%CI 0.18-0.71、p=0.003)。これら2つの比と小児喘息との負の相関は、非喘息の母親にのみ認められ(それぞれ、309例、OR 0.18、95%CI 0.08-0.42、p=0.00007および299例、OR 0.17、95%CI 0.07-0.39、p=0.00003)、喘息の母親では認められなかった(それぞれ72例および69例、母親が喘息であることの交互作用、それぞれp=0.036および0.002)。父親のサイトカイン比は小児喘息とは関連していなかった。非喘息の母親のサイトカイン比は小児皮膚試験反応、総IgE、5歳時の医師の診断によるアレルギー性鼻炎、乳児湿疹とは関連していなかった。本研究の知見は、非喘息の母親の妊娠時におけるサイトカインプロファイルが児の喘息に関連しているが、アレルギーには関連していないことを示す最初のエビデンスであり、喘息発症の過程が胎内より始まり、アレルギーとは別に進展することを示唆している。

Am J Respir Cell Mol Biol. 2018 Nov;59(5):592-600.

NEW

USP38 critically promotes asthmatic pathogenesis by stabilizing JunB protein.

Chen S, Yun F, Yao Y, et al.

Th2型免疫応答はアレルギー性喘息の病態に大きくかかわっている。Th2型免疫の調節に関する分子メカニズムは、いまだ十分に解明されていない。本研究では、ユビキチン特異的プロテアーゼであるUSP38が、Th2が介在しているアレルギー性喘息に大きくかかわっていることを報告する。T細胞受容体(TCR)による刺激がUSP38の発現を亢進させており、USP38はTh2分化に特異的な転写因子であるJunB蛋白の安定化に関与していた。その結果、in vivo、in vitroの両方において、TCR刺激によるTh2サイトカインの産生およびTh2の分化にUSP38が特異的に関与しており、USP38欠損マウスはOVAまたはHDM誘発性喘息の発症に抵抗性を示していた。そのメカニズムとして、USP38はJunBと直接的に関与しており、JunBのLys-48結合性ポリユビキチンを脱ユビキチン化した結果、TCR誘発性のJunBターンオーバーを阻害していた。USP38は、Th2免疫機構およびその関連喘息に特異的な脱ユビキチン化酵素であることが初めて示された。

J Exp Med. 2018 Nov 5;215(11):2850-2867.

Infant Viral Respiratory Infection Nasal-Immune-Response Patterns and Their Association with Subsequent Childhood Recurrent Wheeze.

Turi KN, Shankar J, Anderson LJ, et al.

【背景】反復性喘鳴や喘息はRSV感染に伴う新生児期の免疫形成の変化の結果によるものと考えられているが、これまでに報告されている感染に対する鼻の免疫応答に関する研究は、個別のサイトカインのみで評価されており、感染に対する免疫応答全般を捉えたものではない。【目的】RSV感染反応における鼻の免疫フェノタイプ、および、反復性喘鳴との関連を同定した。【方法】本研究は、6~12月に生まれた健康な新生児を登録し、最初のRSV感染が認められた児を追跡した新生児コホート研究である。鼻洗浄サンプルを呼吸器感染急性期に採取、ウイルスをRT-PCRによって同定し、免疫応答を多重分析ビーズパネルを用いて評価した。免疫応答クラスターは機械学習を用いて同定し、1歳、2歳時の反復性喘鳴との関連はロジスティック回帰分析によって評価した。【結果】RSVおよびHRVという2つの新規かつ明らかな免疫応答クラスターを同定した。RSV感染児では、非インターフェロン抗ウイルス免疫反応メディエーターが低値であるという特徴がみられ、Type-2およびType-17サイトカイン高値が1歳、2歳時の反復性喘息と有意に関連していた。一方、HRV ARI感染児ではこの特徴はみられなかった。ネットワーク解析では、Type-2およびType-17サイトカインがRSVに対する免疫応答の中心である一方で、成長因子やケモカインはHRVに対する免疫応答の中心であった。【結論】新生児のRSV感染における明確な免疫応答クラスターおよび反復性喘鳴のリスクとの関連は、喘息発症のリスク因子やメカニズムに対する新たな視点を示唆している。

Am J Respir Crit Care Med. 2018 Oct 15;198(8):1064-1073.