Asthma Selected Papers Online

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下記雑誌に掲載された喘息に関する論文のうち、注目すべき論文を3人の編集委員が厳選。病態、疫学、診断、治療の4分野に分け、各論文を簡単な要約で紹介しています。

※現在167論文紹介しています。

【対象雑誌】
  • Allergy、 Am J Respir Cell Mol Biol、 Am J Respir Crit Care Med、 Ann Am Thorac Soc、 Chest、 EMBO J、 Eur Respir J、 Immunity、 Int J Mol Sci、 J Allergy Clin Immunol、 J Clin Invest、 J Exp Med、 JAMA、 Lancet、 Lancet Respir Med、 N Engl J Med、 Nat Commun、 Nat Med、 Proc Natl Acad Sci USA、 Respirology、 Science、 Thorax、 など
【編集委員】
  • 一ノ瀬 正和(東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野 教授)
  • 井上 博雅 (鹿児島大学大学院呼吸器内科学 教授)
  • 長瀬 洋之 (帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギーグループ 教授)

最新論文

DNA methylation in nasal epithelium, atopy, and atopic asthma in children: a genome-wide study.

Forno E, Wang T, Qi C, et al.

【背景】エピジェネティックなメカニズムは、気道上皮バリアを変化させ、最終的には喘息などのアトピー性疾患の発症につながる。我々は、学童期小児のアトピーおよびアトピー性喘息と関連したDNAメチル化プロファイルを検討した。【方法】多段確率抽出法を用いて登録した9~20歳のプエルトリコ人小児483例の鼻粘膜上皮、および、アトピーまたはアトピー性喘息におけるDNAメチル化のゲノムワイド研究を行った。アトピーは、一般的な空中アレルゲンの少なくとも1つでIgE陽性(≧0.35 IU/mL)があることと定義した。喘息は、医師の診断があり、かつ、前年の喘鳴で定義した。有意(偽発見率 p<0.01)なメチル化シグナルは遺伝子発現と相関しており、上位のCpG配列はパイロシークエンシング法にて確認された。その後、主にアフリカ系アメリカ人小児72例のコホート、および、European birth cohortの432例の小児において、主なメチル化に関する発見を再確認した。次に、すべてのコホートのアトピーまたはアトピー性喘息による鼻粘膜上皮メチル化に基づく分類モデルを検討した。【結果】DNAメチル化プロファイルは、2014年2月12日~2017年5月8日の期間に登録したプエルトリコ発見コホートにおいて、アトピーのある児(312例)とアトピーのない児(171例)の間で、明らかに異なっていた。共変数および多重試験による補正後、アトピーによって8,664通りにメチル化されたCpG配列を発見し、上位30種類のCpG配列に対する偽発見率で補正したp値の範囲は、9.58×10-17-2.18×10-22であった。これらのCpG配列は、CDHR3およびCDH26を含む上皮バリア機能に関連する遺伝子の中または近くにあり、FBXL7、NTRK1やSLC9A3などの、気道上皮の保全性および免疫制御に関連する他の遺伝子にも存在していた。さらに、上位30種類のCpG配列のうち28種類は、両方の独立したコホートにおいて、同様の傾向を再現していた。鼻粘膜上皮のメチル化に基づくアトピーの分類モデルは、プエルトリココホート(AUC 0.93-0.94および精度 85-88%)および再現コホート両方(AUC 0.74-0.92および精度 68-82%)において、良好に機能していた。この分類モデルはプエルトリココホート(AUC 0.95-1.00、精度 88%)および再現コホート(AUC 0.82-0.88、精度 86%)におけるアトピー性喘息に対しても、良好に機能していた。【結論】小児のアトピーおよびアトピー性喘息に関連している気道上皮の特異的メチル化プロファイル、またアトピーまたはアトピー性喘息によって小児を分類可能な鼻粘膜メチル化パネルを同定した。本研究によって、喘鳴児の喘息発症を予測するなど、将来的に臨床応用できる鼻粘膜上皮のメチローム活用の実現可能性が高まった。

Lancet Respir Med. 2019 Apr;7(4):336-346.

Repeated exposure to temperature variation exacerbates airway inflammation through TRPA1 in a mouse model of asthma.

Du C, Kang J, Yu W, et al.

【背景・目的】疫学研究によって、大気温が喘息の誘発因子で重要な原因の一つであると示唆されている。本研究では、BALB/cマウスの実験的喘息モデルを用いて、温度誘発性気道炎症の影響および分子メカニズムを検討した。【方法】マウスを21日間、異なる温度環境 (26℃に維持、26℃と18℃のサイクル、26℃と10℃のサイクル下に安置させながら、卵白アルブミン(OVA)感作・曝露を行った。選択的transient receptor potential A1(TRPA1)チャネル阻害薬であるHC030031を用いて、「喘息」気道におけるTRPA1のメカニズムの検討も行った。OVAの最終曝露後、in vivoで肺機能を測定し、気管支肺胞洗浄液(BALF)および肺の炎症を評価した。【結果】気温の変動、特に最も大きい気温差(16℃)は、OVA誘発性喘息マウスにおいて、血清総IgEとIgG1の値、BALF中の炎症細胞とサイトカインが増加させるなど気道炎症を増悪させた。病理組織学的変化および肺機能の解析により、低温曝露や気温の変動を繰り返すと気道過敏性(AHR)が悪化することが示された。最も大きい気温の変動(26℃/10℃サイクル)では、免疫組織化学的検査においてTRPA1の発現が亢進していたが、HC030031を投与すると、TRPA1発現が阻害され、喘息様の病理的特徴も減弱していた。【結論】気温変動を繰り返すと、実験的な「喘息」は増悪し、TRPA1がこの温度依存性炎症を制御していた。

Respirology. 2019 Mar;24(3):238-245.

Nasal Allergen Neutralising IgG4 Antibodies Block IgE-mediated Responses: Novel biomarker of Subcutaneous Grass Pollen Immunotherapy.

Shamji MH, Kappen J, Abubakar-Waziri H, et al.

【背景】花粉の皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)は、血清中のIgG4関連阻害抗体を誘導し、IgEによるアレルゲンがB細胞に結合することを阻害する。【目的】SCITが阻害活性を持つ鼻アレルゲン特異的IgG4抗体を誘導して、臨床効果と密接に関与するか検討した。【方法】横断的比較研究で、牧草花粉のシーズンに、10例のSCIT治療患者・13例の無治療アレルギー患者(SAR)・12例の非アトピー対照者(NA)から、鼻汁と血清を採取した。オオアワガエリ(Phl p)成分に対する鼻汁および血清のIgEとIgG4をISACマイクロアレイで測定した。阻害活性はIgE-FABアッセイで測定した。IL-10陽性制御性B細胞は末梢血を用いてフローサイトメトリーで測定した。【結果】鼻汁と血清のPhl p 1およびPhl p 5特異的IgE値は、NA群およびSCIT群と比べて、SAR群で上昇していた(p<0.001)。鼻汁のIgG4値は、オフシーズンと比べて花粉シーズンで、SAR群よりもSCIT群で増加していた(p<0.001)。鼻汁および血清中のIgG関連阻害活性は、SAR群と比較して、SCIT群で有意に増強していた(p<0.001)。阻害活性の強度は、血清中で66%であったのに対して鼻汁中では96%であり、鼻汁中(p=0.03)および血清中(p=0.002)のIgG減少後に阻害活性は回復した。鼻汁(r=-0.67、p=0.0011)および血清(r=-0.59、p=0.0097)の阻害活性は、全身症状の改善と相関していた。IL-10陽性制御性B細胞は、SCIT群において、オフシーズンと比較して花粉シーズンに増加していた(p<0.01)。【結論】本研究は、喘息の有無に関わらずアレルギー性鼻炎において、鼻汁のIgG4関連阻害活性が、アレルゲン免疫療法の臨床的奏効と密接に相関していることを初めて示した。

J Allergy Clin Immunol. 2019 Mar;143(3):1067-1076.

Exacerbation Patterns in Adults with Asthma in England: A Population Based Study.

Bloom CI, Palmer T, Feary J, et al.

【背景】喘息の病態は多様であり、増悪パターンに対する理解は不足している。過去の研究では、比較的短期間のフォローアップもしくは重症喘息を対象としていた。【目的】すべての重症度の患者集団における長期間のフォローアップを行い、喘息増悪パターンを明らかにする。【方法】2007~2015年の期間に、18~55歳の喘息患者と増悪を同定するため、電子健康記録票を使用した。喘息治療薬の使用状況によって定義された重症度ごとの増悪パターンを明らかにするため、7年以上のコホートデータを用いた。散発型(1回以上の増悪があった年が1回)および再発型(増悪があった年が1回以上)の増悪パターンについて、リスク因子を推定する効果を、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。コホート内症例対照研究においては、過去5年の増悪歴と将来の増悪との関連が検討された。【結果】51,462例の患者が7年のコホートに適合し、増悪のなかった患者は64%であった。増悪の認められた患者のうち、51%は1回のみで、増悪の頻度は喘息の重症度とともに増加していた。370例(0.7%)のみに頻回の増悪が認められるフェノタイプ(毎年増悪)が認められ、うち58%が軽症/中等症喘息であった。増悪のリスク因子は、特定の増悪パターンと特異的に関連しているわけではなかった。増悪歴はほかのすべての因子よりも将来的な増悪のリスクを増加させていたが、この影響は5年以降にはみられなかった。【結論】7年のフォローアップ期間中、約3分の1の患者で増悪が認められた。増悪を認めた患者のうち、半数で再増悪は認められず、将来の増悪が起こるタイミングはほとんど予測できなかった。2%の患者は頻回に増悪が起こるフェノタイプであった。過去の増悪パターンは、将来的な増悪を予測する最も有用なリスク因子であった。

Am J Respir Crit Care Med. 2019 Feb 15;199(4):446-453.

Immediate bronchodilator response in FEV1 as a diagnostic criterion for adult asthma.

Tuomisto LE, Ilmarinen P, Lehtimäki L, et al.

【背景】喘息は多様かつ可逆的な呼気の気流制限によって特徴づけられている。したがって、診断ツールとして気管支拡張薬による反応であるFEV1変化率(ΔFEV1BDR)の使用は合理的であり、「ベースラインFEV1から12%以上および200mL以上の増加」が一般的な基準として用いられている。【目的】成人に対するΔFEV1BDRの診断カットオフ値確立の経緯、および、その推奨の根拠となるエビデンスを評価した。【方法】スパイロメトリーの解説や喘息の診断に言及しているすべての原著論文、症例報告、ガイドラインの文献リストより研究を検出し、文献の精読を行った。【結果】健常者におけるΔFEV1BDRのエビデンスは限られており、喘息患者の研究はさらに少数であった。健常者において、絶対的ΔFEV1BDRの上位95パーセンタイルは240~320mLの範囲、初回FEV1より算出した相対的ΔFEV1BDRの範囲は5.9~11.3%、予測FEV1より算出したΔFEV1BDRの範囲は8.7~11.6%であった。しかし、初回FEV1より算出したΔFEV1BDRの絶対値および割合は、年齢、性別、身長および気流閉塞の程度に依存していた。したがって、予測FEV1より算出したΔFEV1BDRの使用がより適切であると考えられた。【結論】喘息患者を健常者と鑑別する感度をもつΔFEV1BDRのカットオフ値を評価するためのデータが十分に報告されていない。新たに診断された喘息患者における、さらなる研究が求められる。

Eur Respir J. 2019 Feb 14;53(2). pii: 1800904.