Asthma Selected Papers Online

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下記雑誌に掲載された喘息に関する論文のうち、注目すべき論文を3人の編集委員が厳選。病態、疫学、診断、治療の4分野に分け、各論文を簡単な要約で紹介しています。

※現在186論文紹介しています。

【対象雑誌】
  • Allergy、 Am J Respir Cell Mol Biol、 Am J Respir Crit Care Med、 Ann Am Thorac Soc、 Chest、 EMBO J、 Eur Respir J、 Immunity、 Int J Mol Sci、 J Allergy Clin Immunol、 J Clin Invest、 J Exp Med、 JAMA、 Lancet、 Lancet Respir Med、 N Engl J Med、 Nat Commun、 Nat Med、 Proc Natl Acad Sci USA、 Respir Med、 Respirology、 Science、 Thorax、 など
【編集委員】
  • 一ノ瀬 正和(東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野 教授)
  • 井上 博雅 (鹿児島大学大学院呼吸器内科学 教授)
  • 長瀬 洋之 (帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギーグループ 教授)

最新論文

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Defective Fibrillar Collagen Organization by Fibroblasts Contributes to Airway Remodeling in Asthma.

Mostaço-Guidolin LB, Osei ET, Ullah J, et al.

【背景】組織学的染色は、喘息の気道リモデリングに関連する細胞外マトリックス(ECM)の変化を可視化するゴールドスタンダードとして用いられてきた。しかし、組織学的染色は、組織機能の変化を理解するのに必要なECMの生化学的および構造的特徴に関する情報を提供できない。【目的】喘息でリモデリング状態となっているECMの生化学的および構造的情報を得るために、線維性コラーゲンおよびエラスチンを可視化する非線形光学顕微鏡(NLOM)とテクスチャ解析アルゴリズムの有用性を検証した。【方法】喘息患者群(n=13)と対照群(n=12)から得た移植ができなかったドナー肺を、NLOMによる気道コラーゲンおよびエラスチン線維の評価と、in vitro実験のための肺線維芽細胞の抽出に用いた。【結果】NLOMイメージングでは、対照群と比べて、喘息患者群の中枢気道および末梢気道において、線維性コラーゲンが増加しているだけでなく、組織の乱れと崩壊が強くみられた。さらに、そのような構造的変化は、疾患の重症度に関係なく小児喘息患者、成人喘息患者のいずれでも認められた。In vitroの検討では、喘息気道の線維芽細胞は、線維性コラーゲンⅠをパッケージングする能力が減弱しており、コラーゲン原線維パッケージングに重要なデコリンの発現も減少していた。透過電子顕微鏡法を用いると、対照群と比べて、喘息患者の気道ではコラーゲン原線維のパッケージングが障害されていた。【結論】NLOMイメージングはECMの構造的評価を可能にし、それにより、喘息の気道リモデリングには、気道線維芽細胞による組織の乱れた線維性コラーゲンの堆積が関連していることが示唆された。本研究は、in vivoで気道リモデリングを評価するためにNLOMが将来的に臨床応用される可能性を示した。

Am J Respir Crit Care Med. 2019 Aug 15;200(4):431-443.

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Long-Term Azithromycin Reduces Haemophilus influenzae and Increases Antibiotic Resistance in Severe Asthma.

Taylor SL, Leong LEX, Mobegi FM, et al.

【背景】マクロライド系抗菌薬であるアジスロマイシンは、成人の持続的症候性喘息患者の増悪を減少させる。しかし、マクロライド系薬剤の多面的作用のために、細菌のコロニー形成の増加、または、抗菌薬耐性菌の増殖のような意図しない微生物的な問題が起こることがあり、アジスロマイシン維持療法の長期安全性には疑問がある。【目的】気道細菌叢、病原菌量、および、抗菌薬耐性遺伝子の発現に対するアジスロマイシンの影響を評価した。【方法】16S rRNAシークエンシングおよび定量PCR(qPCR)を用いて、AMAZES試験(持続性コントロール不良成人喘息患者を対象とした、アジスロマイシン500mg週3回経口投与の48週、二重盲検プラセボ対照試験)登録患者の喀痰中微生物に対するアジスロマイシンの影響を評価した。抗菌薬耐性の評価のため、統合テンプレートショットガン解析シークエンシング、qPCR、分離全ゲノムシークエンシングを行った。【主な結果】61例(プラセボ群 34例、アジスロマイシン群 27例)より、ペア喀痰サンプルを得た。アジスロマイシンは、全体の細菌数には影響していなかったが(p=0.37)、Faithの微生物多様性(p=0.026)、および、Haemophilus influenzaeの菌数(p<0.001)を有意に減少させた。アジスロマイシンは、Streptococcus pneumoniae、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、Moraxella catarralisの菌数に、有意な影響を与えなかった。検出された89の抗菌薬耐性遺伝子のうち、マクロライド耐性遺伝子〔erm(B)、erm(F)、msr(E)、mef(A)、mel〕、および、テトラサイクリン耐性遺伝子〔tet(M)、tet(W)〕が有意に増加していた。【結論】持続性コントロール不良喘息患者において、アジスロマイシンの追加投与は、全体微生物数または病原菌数を変化させることなく、気道のH. influenzae菌数を減少させた。これまでの研究結果と同様に、マクロライド耐性は増加していた。これらの結果により、持続性コントロール不良喘息患者に対する長期治療として、非抗菌マクロライドの効果を評価する研究の必要が示された。

Am J Respir Crit Care Med. 2019 Aug 1;200(3):309-317.

IL-4 receptor engagement in human neutrophils impairs their migration and extracellular trap formation.

Impellizzieri D, Ridder F, Raeber ME, et al.

【背景】2型免疫反応は、寄生虫や毒素に対する生体防御に寄与している。しかし、2型免疫反応における好中球の役割と制御については意見が分かれている。寄生虫感染モデルでは好中球は2型免疫反応に寄与することが示唆されているが、一方で、喘息のような2型炎症性疾患では、好中球は疾病の重症化と関連している。【目的】2型サイトカインであるIL-4とIL-13のヒト好中球機能への影響を検討した。【方法】IL-4またはIL-13刺激が、ヒト末梢血好中球における、(1)IL-4受容体サブユニット発現、(2)好中球細胞外トラップ(NET)形成、(3)CXCL8に対するin vitroまたはヒト化マウスにおける遊走、(4)CXCR1、CXCR2、CXCR4発現に及ぼす効果を検討した。また、アレルギー患者と非アレルギー患者由来好中球の比較も行った。【結果】ヒト好中球はIL-4受容体を発現しており、IL-4またはIL-13刺激によって、好中球のNET形成能、in vitroのCXCL8に対する遊走は低下した。同様に、IL-4で刺激したヒト好中球では、NOD-scid-Il2rg-/-マウスにおけるin vivoの遊走能は低下していた。この反応低下には、ヒト好中球におけるIL-4やIL-13刺激によるCXCR1、CXCR2の発現低下を伴っていた。Ex vivoの検討では、アレルギー患者由来の好中球や、アレルギードナー由来血清に曝露した非アレルギー患者由来の好中球では、NET形成能、CXCL8に対する遊走活性が低下しており、IL-4 /IL-13刺激した好中球と同様の挙動であった。【結論】2型サイトカインによるヒト好中球のシグナル伝達は、好中球エフェクター機能に影響を及ぼしており、2型炎症性疾患の免疫反応に重要な寄与をしている。

J Allergy Clin Immunol. 2019 Jul;144(1):267-279.

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Stratification of asthma phenotypes by airway proteomic signatures.

Schofield JPR, Burg D, Nicholas B, et al.

【背景】好酸球数および好中球数による層別化は、喘息に対する理解を向上させ、標的治療に役立つが、治療反応性の予測精度の点では改善の余地があり、基礎的メカニズムをより深く理解する必要がある。【目的】層別化の改善のため、プロテオミクスシグネチャーによって定義された喘息の分子的サブフェノタイプを同定する。【方法】喘息の層別化の新たな手段として、246例の被験者(206例が喘息患者)の喀痰上澄み液のプロテオームを解析するため、無バイアスラベルフリー定量質量分析法、および、位相的データ解析を使用した。基礎的メカニズムの情報を得るため、喀痰中の細胞をマイクロアレイで解析し、トランスクリプトームのデータを追加で得た。【結果】喀痰のプロテオーム解析では、プロテオミクスの特徴の類似性に基づく10のクラスター、プロテオタイプが同定され、それぞれ個別的な喘息の分子的サブフェノタイプを示した。メタデータとして10クラスター上に顆粒球数を重ね合わせると、3つのクラスターが高好酸球性、3つのクラスターが高好中球性、2つのクラスターが比較的顆粒球性炎症の少ない高アトピー性というように、さらに3つのフェノタイプに定義された。これら3つのフェノタイプそれぞれについて、ロジスティック回帰分析により蛋白バイオマーカー候補が同定され、合致したトランスクリプトームのデータによって、それぞれが活性化される基礎的メカニズムが示された。【結論】本研究は、現在顆粒球性炎症の定量化によって分類されている喘息のさらなる層別化を示し、新規の治療標的となりうる基礎的メカニズムに対するさらなる知見をもたらした。

J Allergy Clin Immunol. 2019 Jul;144(1):70-82.

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Fine particulate matter exposure during pregnancy and infancy and incident asthma.

Jung CR, Chen WT, Tang YH, et al.

【背景】肺の発育は、妊娠期から出産後にかけての多段階のプロセスであり、大気汚染物質による発育の阻害が、後に呼吸器疾患を引き起こす可能性がある。【目的】妊娠期および乳幼児期の1週間の平均的な微小粒子物質(PM2.5)曝露の喘息に対する影響を検討し、喘息に対するPM2.5が影響するメカニズムの解明に役立てるため、傷害を受けやすい時期を同定した。【方法】Taiwan Maternal and Child Health Databaseより、台中市における2004~2011年に出生した児184,604例を含む出生コホート研究を抽出し、2014年まで追跡調査を行った。それぞれの被験児におけるPM2.5曝露量の推定には、衛星観測に基づくハイブリッドモデルが用いられた。分布ラグ非線形モデルと組み合わせたCox比例ハザードモデルを用いて、妊娠期および乳幼児期における喘息とPM2.5曝露との関連を評価した。【結果】出生コホートには、34,336例の喘息児が含まれ、児の喘息診断時の平均年齢は3.39±1.78歳であった。妊娠期6~22週および出生後9~46週におけるPM2.5曝露量の増加が、喘息発症率の増加と有意に関連していた。喘息のハザード比(HR)を示す曝露-反応関係は、妊娠期では93μg/m3以上のPM2.5曝露で急激に増加した。さらに、そのHRsは、出産後の26~72μg/m3のPM2.5曝露で有意なまま推移し(範囲 1.01-1.07)、73μg/m3以上のPM2.5曝露でHRが急激に増加した。【結論】出生前におけるPM2.5への曝露が、後の喘息発症と関連していた。傷害を受けやすい時期は、妊娠前中期および出生後の乳幼児期である可能性が示唆された。

J Allergy Clin Immunol. 2019 Jun;143(6):2254-2262.e5.